曽我部恵一 インタビュー!
8ヶ月ぶりとなるニューアルバム『Blue』をリリースした曽我部恵一。ギブソンジャパンのショールームでギターを弾きながら、新作についてのこと、自身が運営するレーベルROSE RECORDSやカフェCITY COUNTRY CITYなどのことについて話してもらった。
前作は『LOVE CITY』というアルバムでしたが、個人的にはタイトルもあってか80's CITY POPS的な洗練されたイメージを感じたんですね。打ち込みっぽい曲もあったからかもしれませんですが…。そして、今作は全体的にメロウで、アコースティックギター主体のオーガニックな雰囲気を感じさせますが、どのような心境の変化で前作からこのようにつながってきたのですか?
そんなに考えていないんですけど、前のが録り終わったあとに割とすぐ録り始めて…。で、前のは結構あったかい感じっていうか…ソウルっぽい感じがあったの。だから、今回は割ともっとシャープな、クリアな感じがいいかなと思ってやり始めましたけどね。前のがちょっと秋冬って感じだったから、もっと夏っていう感じでやりたいなぁと思って。
なるほど。前作をリリースしてから7ヶ月ちょっとで、すぐ新しいアルバムをリリースするのですが、今回短いタームでのリリースは自然だったのですか?
夏に(アルバムを)出したいなぁと思っていたんです。
頂いた(今作についての)資料によると“真夏の青春ストーリー”とありますが、コンセプトアルバムということですか?
まぁ、それは夏のアルバムっていうか、なんか夏っぽいという感じのことじゃないかな。
それはご自身もそうやって意識して曲作りを?
そうです。
一番初めに曲を書き始める前からコンセプトがあったんですか?それとも夏っぽい曲があって、その曲に合わせて作り始めた感じですか?
まぁ、作りながらですね。最初からこういう風に仕上げようっていうのはあんまりなかったですけど、作りながら徐々に形が…。
なるほど。コンセプトが先に決まっていると、曲とか歌詞とかって作りやすいですか、作りづらいですか?
コンセプトがあると作りづらいですね、僕は。いろいろ音をとりながら、このアルバムはどういう風になるのかなって探りながら作っていくから。
わかりました。今回は夏っぽくというコンセプトがあったと思うので世界観が統一されていると思いますが、この夏という世界観やイメージをサウンドに落とし込むにあたって工夫した点とか、夏っぽくするために作っている時に意識した点とかありますか?
わりと爽やかな音色っていうか、透明感があるもの選びましたけどね。
ギターの音とかに関しても?
うん、もちろん。で、あんまりこうコテコテに重ねたりしなくてできるだけ音数少ない感じで…。で、歌がポンって出るような。
歌詞については曲ごとに“ひと夏の物語”的なストーリー性がある歌詞なのですが、何かモチーフになったものなどありますか?
個人的に8月生まれなので、夏生まれとしてはサマーソングをやりたいなと思うんだけど、TUBEとかサザンとかではなくて、もっと夏のむなしさっていうか…行き場のない感じっていうか…。
あぁ、そうですね。僕も聴いていて夏の爽やかさと共に刹那的というか夏の夕暮れ的なもの悲しさが同居した作品になっていると思いました。この表裏一体のイメージ起こさせるために、何か意識的にした部分とかありますか?
だからストーリーにしても、詩でも、あまりこうオチがつかないような、起承転結があるようなものではなくって、夏の瞬間みたいなものを切り取れたらいいなと思ってて…。
わかりました。では、歌詞を書いた時のエピソード的なものはありますか?何かあるものを見て、それが反映されたりとかあったりとかしますか?
あぁ、いろいろありますよ、漫画とかね。
どういった漫画とかどういったシーンとか具体的にありますか?
いや、なんかよく漫画を読んだりよくするので…(笑)。それと映画とか…。まぁ、でも、あれじゃないかな…自分の経験っていうか、自分の中に残っている、その感覚がやっぱり全てだから…。
次にサウンドについて聞いていきたいのですが。歌の録音についてですが、前作は全体的に歌一本で通す感じが多かったように思うのですが、今回は主旋のメロディをダブルにしたり、ハモったり、声を二本以上重ねてるのがサビとかだけじゃなくて…
あぁ、あるかもしれないですね。
Aメロから結構あったりして…。意図的に定位が移動していたりするじゃないですか?
うん、うん。
なぜそういう風にしたのかなと、聴いていて思ったのですが…。
あぁ。ダブルヴォーカルとかやんなくなるからね、年を取ると。自信が出ちゃって。最初はデモテープとか作ると自分の声が恥ずかしいからダブルにしたリとかね、ごまかしたりするんですけど…。
はい。
そういうのって、こうキャリアがどんどん増すと「もうオレはダブルなんかしねぇ!」みたいな感じになるじゃないですか?(笑)
はい。わかります、わかります(笑)。
あぁではなくて、いつもこうダブルにしてる…ジョン・レノンとかずーっとダブルにしてたりして…なんかそういう感じの方がフレッシュな感じというか…いつまでもポップな感じみたいのがよくて…。なんか年取ってくると結構「オレの歌を聴け!」的になってくるから。じゃなくても、まぁ、それもいいんだけど、今回はもっと若いっていうか、blueっていうぐらいだから、もっと蒼い感じっていうかね…。で(ダブルヴォーカル)やりましたね。
そうですか。資料に“夏のサウンドトラック”とあったので、歌のメッセージ性というよりは…。ダブルとか声を多く入れることで楽器と混ざるじゃないですか?
うん、そうっすね。
で、全体的に広がりを持たせて世界観を出す効果を狙ったのかなと思ったのですが…。
だから、アレンジの一個みたいな感じになっていますね。このアルバムに関しては歌がね。うん。まぁ、完全歌モノみたいなものもやりたいっすけどね。それもやりたいけど、今回は割と主張が…主張がないっていうとちょっと違うかもしれないけど。…もっと淡白な感じ。パッと見、パッと聴き、淡白な感じで濃いものは中にあるんだろうけど、うん。
歌モノ的なものをやりたいってコトですか、オフィシャル・サイトのブログを見たら、6月に合宿でレコーディングをしていたようですが…。
あぁ、こないだ長野で。
ちょっと話が脱線しますが、それは歌もの系な感じなんですか?
それはね、僕の歌はもっと楽器みたい。
あぁ、そうなんですか?
それは友達と二人で作ったんですけど、友達はDJだから…基本的にはダンストラックばっかり作る人なんだけど…。彼はシンセでアンビエントみたいな音を作って、僕の声を素材にして一曲作るみたいな感じの作品ですね。
なるほど。
だから、あまり歌ものって感じじゃないね。
それはリリースとか決まっているんですか?
まぁできたら、年内には出したいなと思っているんですが…。
まだ途中な感じ?
そうっすね。
わかりました。すみません、話が脱線しました。
そして今作のサウンド作りに関してなんですが、夏っぽいということで気をつけた点は何かありましたか?そういうイメージを出す上での楽曲作りもそうだと思うんですけど…。
何かあるかなぁ…。
サウンドに直接的ではなくても、気分的に夏っぽくするためにスタジオ内を何かをしたとか…(笑)。
そういうのはなかったですね。とにかくずっとやってたからね。余裕なかったですね、今回は。
そうなんですか?どのくらいかけて録ったんですか?
去年の11月ぐらいからやっているから結構長いっすね。ついこないだまでやってたから半年以上は。まぁ、その間ツアーとかやりながらやっているから…合間ぬって。
わかりました。そして今作が完成して…まだ出来たばかりで客観視できないかもしれないですが、トータル的にどうですか?
今回作るの結構難航したアルバムだから、やっとできてよかったなぁっていうのがあって…。マスタリングして取材とか受けてからもまだやっていたからね、直しを。だから、お手元(編集部)に行っているヤツ(今作のサンプル音源)が、最新のかどうかはちょっとわからないんだけど…。全曲解説の取材とか受けても、まだ曲変えたりしてたから!(笑)
ああ、なるほど(笑)
結構大変でしたけどね。できてよかったなっていうのはありますね。
多分、僕らに届いたのは最後だと思いますよ。今月(7月)入ってからもらったヤツなので。
でもまぁ、ひさびさにこうやって作りこんで…レコーディングは楽しかったですけど。もう当分いいかな…と(笑)。
アハハ。けど、すぐレコーディング合宿で行ってたじゃないですか?(笑)
あれはもう趣味っていうか、遊びのレコーディングだから。
その作品もROSE RECORDSからリリースする予定ですか?
おそらく。
それは曽我部さん名義でなく、何かユニット名とかつけて?
うん。まぁ、連名かもしれないし…ちょっとまだ決まってないです。
なるほど。わかりました。
アルバムができて、またツアーがあると思うんですけど…。いつも音源を聴かせていただいて、ライヴも観させてもらっているんですけど、CDの雰囲気とライヴで結構違うじゃないですか?ライヴは大分アグレッシヴだなと思うんですが…。
えぇ。
今回のアルバムの中の楽曲もライヴではまた違った印象になると思うんですが、ライヴ用にアレンジしてバンドで演奏するのが楽しみな曲はありますか?
う〜ん。まぁ、バンドでやると結構キーとかも上がりますからね。だから、よりアグレッシブにソウルフルになるなっていうのは全体的にはありますけど。だから、ライヴでやってる活動のああいうホットな感じとはちょっと別のクールなとこが(今作の)肝だから、それをどうやってステージでやろうかなっていうのは今考え中。
なるほど。もうすぐですもんね、来月ですもんね。
えぇ。
初めてウェブマガジンで紹介させてもらうので、今までの活動について聞かせてください。数年前にメジャーを離れて、インディーズで自分のレーベル(ROSE RECORDS)を持とうと思ったキッカケを教えてください。
キッカケ?自分でやりたいなみたいなものは元々あって…、でも現実的に結構難しいことだからっていうので躊躇していた部分ももちろんあったんだけど、まぁ、やってみようかなと…。
以前からやりたいという気持ちがあったということですが、重い腰を上げたっていうよりかは、やってしまえ的な軽い感じなんですかね?
ってトコありますね。音楽業界の状況も結構変わってきたと思うから、いい機会かなと思ってね。
なるほど。で、自分でレーベルを持っていろいろなアーティストの作品をリリースするようになって、音楽に対する姿勢って変わりましたか?
特に変わらないですね
そうですか。レーベルの運営は誰かに任せているんですか?
いやいや、やってますよ。みんなで、うん。
ROSE RECORDSからリリースするアーティストはジャンルも全然違って非常に個性的なんですが、何か基準はありますか?まぁ、単純に好みだとは思うんですが…。
う〜ん、まぁ、そうですね、オリジナリティがある人達がいいなぁとは思いますけどね、うん。
そして、ROSE RECORDSの他にカフェ兼中古レコードショップCITY COUNTRY CITYをやっていますが、これはどういうキッカケですか?これもやりたいなっていう…レーベルと同じような感じなんですか?
そうっすね。友達と一緒にやっているから、みんながやりたいようにやってる感じですね。オレもその一部でここをこうしたいなっていうのやっているし。
なるほど。これから音楽はもちろんですけど、新たにやりたいことなどありますか?このようにROSE RECORDSに付随したもので、カフェとかじゃないですけど、なんかあったりします?
あぁ、はい。やりたいこといっぱいあるから一個ずつ言うのは大変だけど…。もちろん音楽的にも充実していきたいし、それと同時に生活とか自分たちの周りの事とかも充実していきたいですね。だから音楽もいいの作りたいし、レーベルとしてもしっかりしたレーベルにしたいなみたいな…。だから足場を固めつつ、やりたいことやれて、遊んで、っていうのをやりたいですけどね。
わかりました。ちょっとプライベート的なところですが、普段の曲作りってどういう感じですか?生活の一部になっていますか?どういう感じでいつも曲を作っているのかなと思ってですね…作ろうと思って作ってる感じですか?
いや、暇な時ギター持って作りますけど…。いくつかのアイディアはいつも頭の中に平行してあって、それが形になりそうな時にパッて作ったりとか…。あとは何かいいフレーズとか、題材があった時に「コレは曲になるな」とか思ったら表に出す感じですかね…。
曽我部さんの曲を聴いていると街の風景とか、いろんな普段の生活の風景が見えてくるようなイメージを僕は持っていてですね…。
はい。
なので、曲作りが普通の生活の時に一部、生きていく上で呼吸するのと同じ感覚なのかと。
あぁ、まぁそうですけどね。オレ、他の音楽知らないから、日本の今の現代の…。どんな感じ?(笑)他はどうですか?あまり生活見えてこないのかな?(笑)
いやぁ(笑)。僕もちゃんと聴いてないんでアレですけど…(笑)。
オレは別に歌いたい歌があるじゃないですか。だから自分が歌いたいものを作らないと意味ないから…。なんか格好つけた曲とかだと後で恥ずかしくなったりとか、「ライヴではあまりやりたくない」とかなったら嫌だから。だから、今日感じたことを、また今日歌にするだけで…。うん、そんだけっすね!
なるほど…。
日記のようなものですね。僕はほんとに。
わかりました。では一番最後に、曽我部さんにとって下北沢とはなんですか?
地元?
アハハ。
地元っていうかね、住んでる場所っていうかね。事務所もあるし…。
なぜゆえ、下北に?
下北好きなんすよ、すごい。オレ田舎から出てきて一番好きになった街かな。
なるほど。なんかすごい密着してる感じがあったので…。
あと好きな街…神保町とかも好きですけどね。いくつか東京も好きな街あって…地方にもいろんな好きな街があって、その中のひとつですね。で、住んでるからってなだけですね。オレ、結構さぁ「地元、下北といえば…」みたいな感じで取材受けたりするんすけど、別にそんなことなくて…(笑)。大体、他の人と違うのは…他のアーティストとかって住んでる場所言わないっすよ、フツーは!
あぁ、そうですよね。
公表しない!危ないから。
あぁ、そうですよね。(笑)
オレは下北に住んでるし、事務所も下北に事務所があるから言っているだけで…。うん、それだけですね。
はい、わかりました。ありがとうございました。
 … おわり …

取材協力:
Gibson Guitar Corporation Japan

  Blue / 曽我部恵一
ROSE 53 2,500yen (tax in)
2007.8.2 on sale

01. 朝日のあたる街 hot love, cold city
02. 春を待つ人 a spoonful of spring
03. スウィング時代 swing era
04. 夕立ち通り soft summer breezin'
05. サマー'71 summer '71
06. 夢を見ていた午後 good bye! summer days
07. LOVE SONG l.o.v.e. song
08. センチメンタルな夏 sentimental na natsu
09. ぼくたちの昨日 yesterday today, tomorrow
10. ブルー blue - hot love, cold city reprise
曽我部恵一 インタビュー!