NAHT インタビュー!
ニュー・アルバム『In The Beta City』をリリースしたばかりのNAHT。とある日のライヴリハーサル終了後にメンバー3人に集まってもらい、2年間の活動休止以降から今回のニュー・アルバムの話まで詳しく聞いた。
ニュー・アルバムの少し前の話からさせてもらいます。2003年より活動を休止していましたが、なぜですか?
一言で言うと膨らんだ風船パンパンになってしまって…割れてしまったという感じで。
それはSEIKIさん個人的にですか?それともバンドとしてですか?
メンバーそれぞれ思いはあったんだと思うんだけど…。
話しあったゆえにそうなった感じですか?
そうですね。
なるほど。わかりました。
今回の活動再開にあたり、サウンドの方向性を変え、メンバー編成を三人に戻した理由は?
単純に求めているものが今の形であったり、もう一回、素に戻ろうかという意識がすごく強かったんだよね。膨らみすぎていたものがいっぱいあったので、一回整理して、フラットにして、一からもう一回作っていこうかという、そういう意識が強かったので。残った三人でまた一からやろうという感覚でやっていますね、今。
活動休止前と今とではサウンドの違いがあるのですが、サウンドの方向性に変えるがゆえに3ピースにしたのか、それとも3ピースだからこそのサウンドの方向性なのかどっちなのかなと思ったのですが。
両方あると思うんだけど…。まぁ、出来ることはおのず限られてくるし、無理をせずといったら語弊があると思うんだけど、小さいことでもいいからひとつずつ確実に塗りつぶしていきたかったんだよね。
なるほど。
そういった意味ではサウンドのスタイルが余計な物がなくなってソリッドになっているということも言えるのかもしれないし。
そういう風にさせた心境の変化はどういうものですか?
元々、MOGA THE¥5とスプリットをやった時にELOのカバーをやったんだけど、それが四つ打ちのディスコティックなアレンジでやって…その曲をライヴで演奏しながら「すごい気持ちいいな」というのが第一にあったんですね。で、今までの曲はわりと平坦な…というか、もちろんリズムは生きているんだけど、メロディーの方に固執してしまって音を重ねていく作業に自分の意識を持っていっていたので、ある意味盲点だったというか…。「リズムをガシガシやってみる曲も面白いな」という発見があって。基本的にはその延長線上のラインにはあるのかなと思うけど…。
そしてニューアルバムに関してですが、今回の収録曲の曲作りはどのような工程で行われましたか?曲が先ですか?それとも詞が先ですか?
これもケース・バイ・ケースなんだけど、主に今回はリズムから出来あがってくる場合が多かったかな。歌詞は普段から書き貯めているものを照らし合わせながらパズルのように組み合わせいくという作業でした。
歌詞を書き貯めているということですが、別の曲にしようと書いていたものが1曲に合わさったりするのですか?
言い回しのデータベースみたいなものの中から、曲のイメージにあったものとかを(歌詞の)お互いの重力でどちらか(の方向)に向かせるという感じかな。レトリックを変えたりしながら。
活動休止期間も曲作りは行なっていたのですか?
二年間休んでいたことになっているんだけど、実際には一年半ぐらいからちょこちょこスタジオには入り始めたんだよね…。その間にスタジオでもう一回、一から作り始める作業をやっていったんだけど、その時にできた曲は今作のアルバムにはほとんど入っていないんだよね。
なるほど、それ以降の曲が入っているということですね?
そうだね。
その時作った曲は方向性を変えていく上で実験台の曲ということですか?
踏み台になった曲ではあると思うよ。まぁ、特に方向性を変えようとして意図的にやったわけではないけど。
曲の元ネタは家でつくってスタジオにはいるタイプですか?それとも完全にその場で…?
スタジオのジャムセッションみたいな…。スタジオのドアを開けて、みんな入ってきて軽くセッティング済ましたら、誰からともなく。TSUYOSHIがベース弾き始めて、そこにTAKAHIROが乗っかって、そこにオレが乗っかるという…そういうスタイルがなんとなくできてる。
では今回のアルバムはほとんどそういう感じが多かったのですか?
多かったと思いますよ、そのへんはリズム隊のふたりから聞いたほうが…。
どうでしょうか?リズム隊のお二人は?
用意してなかった。(笑)
その場で合わせてという感じですか?ベースのフレーズだったり、ドラムのフレーズだったり…。個人的にはそういうのだと手癖がメインになって似たような感じになっちゃたりするのかなと思ったのですが…。
逆に手癖は殆ど使わずに、曲の骨組みになるようなものを持って、投げて、それを返してもらって、それで構築していく。
TAKAHIROさんはどうですか?
ずっと今回のやつ(曲)はアルバムになる前にライヴで長いこと結構やっているのもあるので、曲作りもライヴで足りないところ、「こんな曲が(足りない)…」とか「(こんな)リズムが(足りない)…」とか、そういうのがあったんじゃないかな。
バリエーションを増やす感じですね、「こういう感じの曲がないな」と思ったら、「こういう感じを作ろうか」というような感じですね。なるほど、わかりました。
歌詞についてですが、訳を見せてもらって、そして聞かせてもらって、詞の世界観はストーリー性もありつつもいろいろなメッセージが入っていると思うのですが、いつもどのようなイメージで歌詞を書いているのですか?
ん〜、まぁ、日々思うことなんだよね。自分が綴りたいなという気持ちだったり、それから社会を見て思うことだったり、ものの考え方だったり…。最初から大きなストーリーがあって、それを元に構想してるわけじゃないんだけど。心の中では感熱紙みたいな存在でありたいと思うし、何かを写している感じ…。それを自分の感受性を通して、言葉にしたい、文字にしたいっていう気持ちだけなんだよね。
なるほど。
ものづくりっていう視点から言うとコンテを作っているという感覚ではなくて、普段から思っていることなんですね。メッセージはどう受け取ってもらってもかまわないけど、「あぁ、こんなこと考えているんだ」というのを断片でもわかってもらえればいい。
曲の方向性が変わり歌詞にも影響を与えたと思いますか?
前作とか前の作品にあったような叙情的な部分だったり、憤り的なものは、ほとんど今作にはあらわれてないと思う。もうそういう部分は自分の中には実はあまりなくなってきていて、今度『Narrow Ways』(1stアルバム)を再発するんだけど、もとのジャケット・コラージュに書いた「憤リヲ」って文字も、もう消したし。
次はサウンドの変化についてなんですが、個人的にギターサウンドがだいぶ変わったと思ったのですが、曲の影響でギターサウンドを変えたのか、それともこのギターサウンドを求めて、これらの曲を作ったのか、どちらですか?
自然にそうなっていったから。例えばジェームス・チャンスの音源やアンディ・ギル(GANG OF FOUR)、ウィルコ・ジョンソンとかソリッドなギターがすごく好きで。今回はそこにポイントがあったんで、音が埋まっていったという…そういうニュアンスですよ。
ベース的には、曲調が変わって、何か変えていこうという意識はあったのですか?音質的にも、プレイ的にも。
プレイ的には、さっきいったとおり自分の中のゴーストノート的なものを全部排除して、曲において必要か必要じゃないかというフレーズだけなるだけつめて、フィジカルな部分は実は全然だしてなくて…。二人が持ち寄っているものに対するベースのフレーズってだけ意識して作りました。
ドラムはどうですか?
極力シンプルにしようかなと…。ライヴで緊張しないようにするとか…(笑)まぁ、シンプルに考えた感じです。
今回四分打ちがメインになったじゃないですか?今までは8ビートや速いリズムが主体だったのでリズムがだいぶ変わったと思うのですが、どうですか?
あまり深くは考えてないです。どっちも変わらないですね。
わかりました。
今まで入れてなかった楽器、シンセサイザーとかコンガとかが入ったのはなぜですか?
MOGAとのスプリットを出した時に、わりとそういうエレクトリックなものを使ってレコーディングしたんですよ。で、コンガに対してはライヴで先にやり始めたものだったんで、うまくミックスして入れられたらいいかなという部分と、当時、フェラ・クティとかティガとかニューヨーク周辺でムーブメントとしてあったエレクトロクラッシュの流れも意識していたし、ただ単純に。
コンガは以前から入れていたということですが、初めて入れようと思ったキッカケはなんだったのですか?
PIZZA OF DEATHのオムニバスかな、最初。「Neon Planet」っていう曲を作った時に「これ、もうちょっとなんか欲しい」って思ってて、そのときには完全に頭の中で打楽器が鳴っていたんだよね。コンガでもボンゴでもどっちでもよかったんだけど…。そこで使ってみて、ライヴで再現しようとした時に使い出したっていうのがキッカケ。よく憶えてないんだけど、たぶんその辺だったと思う。
手痛くないっすか?(笑)
手はハンパじゃなく痛い!(笑)今はもうだいぶ慣れたんで。
(コンガ叩き終えた後に)またすぐギター弾くのが痛いんじゃないかなぁと思って…。
まぁ、一番痛いのはコンガ叩き終わった後に(ギターの)ネックを叩いて、そこからまたギターに戻るんだけど…。
はいはい、ジャーンってするとこですか。
そういう流れを作ってるんだけど、そのネックを叩く時が一番痛い。
リハーサルでもやっていましたね。
そうそう(笑)
今回のアルバムが出来ました。単純に感想を聞きたいなと思いますが。
素晴らしくいいものが出来たなと…これはホント自負していますね。心底誇れる、自分たちを誇れるものが出来たなという意識はすごくありますね。
羽田君はどうですか?
そうですね…、あの〜毎日聞ける感じです。毎日聞いているうちに、次の作品の課題だったりなんだりとかいろいろと次のステップが考えられる作品。そういった意味でターニングポイントとなる作品ができたなと思います。
なるほど。TAKAHIROさんはどうですか?
よく曲調が変わったと言われるんですけど、出来上がってバーっと聞いたときにNAHTでビックリした。
(笑)
「やっぱNAHTじゃん!」っていう…。
アハハ、なるほど。
(音を)出している人たちが変わらないから、そういう風になるんだなという…。すごく良いアルバムができたなって、そういう風に思います。
わかりました。
先ほども少し出ましたが、今回このタイミングで1stアルバム(『Narrow Ways』)を再発するということですが、なぜそのようになったのですか?
バンドはね、自分たちの作った作品が世の中に出ていくと最後までその作品の責任を取り続けなきゃダメだとオレは思っているんですよ。ディスコードのやり方(廃盤をつくらない)もすごく気に入っているし…。ところが1stに関してはレーベルとの色々な事情があって、廃盤の状態になっていたので、それを今インターネットで見るとアホみたいな値段ついていたりして、去年あたりから『Narrow Ways』を再発したい旨をレーベルスタッフに伝えていて。で、たまたまレーベルの方からこのタイミングで再発やろうかっていう話もらえて…。今回良い流れであれを再発できる事は嬉しく思う。
最後になりますが、前から個人的に聞きたかったのですが、バンド名はドイツ語の医学用語で結合するという意味のようですが、なぜこの言葉をバンド名にしたのか、バンド名の理由があったら教えてください。
これは、もうオレいろいろなところで言ったし。
すみません、僕がチェックしていなかった…(笑)
結合というよりは、縫い合わせていくという、そういう意味なんだけど…。今まで自分が生きてきた中でバラバラになっていることを、ひとつずつ縫い合わせていきたいなというそういう思いから…。
わかりました。ありがとうございました。
 … おわり …
  In The Beta City / NAHT
STD-01 2,835yen (tax in)
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01. EDIE!EDIE!
02. Parallel Lines
03. Galvanize Me!
04. Moving Gravity
05. Tribally
06. Ill Beat Awakes
07. Shallow
08. Skyline of the Beta City
09. Days You Swerved
10. Remember Four Knives
NAHT インタビュー!